
マーシャル、JC-120、フェンダー…スタジオに行けば必ず置いてある定番アンプですよね。
それぞれのアンプには独自のキャラクターがあり、それが「味わい」でもあります。
ただ、ここで問題になるのがアンプシミュレーターとの相性。
自宅でQuad Cortex(以下QC)やHelix、Kemperといったシミュレーターを使って細かく音を作り込んでいても、スタジオのアンプにリターン接続した瞬間に「ちょっと違う」と感じることは少なくありません。
アンプそのもののキャラクターが音に色をつけてしまうからです。
僕自身もQCを導入してから「場所によって音が変わってしまう問題」に悩んできました。
その他にも、ライブでPAに送るだけだと、背中から自分の音が聴こえてこないため物足りなさを感じることもあります。
「家との音の違いをなくしながら背中で音を感じたい」
そんな思いで購入してみたのがPositive GridのSpark CAB。
この記事ではQCユーザーとしての実体験を中心にレビューしていきますが、HelixやKemper、Headrush、Amperoなど他のアンプシミュレーターを使っている人にも通ずるところがあるので、少しでも参考になればうれしいです。
Spark CABは原音をそのまま出せるスピーカー
Spark CABは、アンプシミュレーターの音を素直に鳴らすことを目的とした「FRFR(フルレンジ・フラット・レスポンス)」スピーカーです。
簡単に言うと、音に余計な味付けをせず、作った音をそのまま出力してくれるスピーカー。
主な特徴

- FRFR志向:アンプのキャラクターで色付けせず、アンシミュで作った音をそのまま出せる
- Sparkシリーズとの連携:付属のケーブル1本で家庭用ミニアンプが迫力のアンプサウンドに
- XLR出力搭載:Spark CABから直接PA卓へ送れる。低価格帯のマルチのようなXLR出力がない機材にはとても便利
- Ground Liftスイッチ:PAと接続したときに発生するハムノイズを防げる
- Contourスイッチ:小音量時に低域と高域を持ち上げ、聴きやすいバランスに補正できる
自宅で使ってみた
音圧を感じながら演奏できる(ある程度音が出せる人向け)

これまで自宅でQCを使うときはほとんどモニターヘッドホンを使っていました。
音もクリアで、細かい調整には向いています。
でもヘッドホンで弾いていると、「スピーカーから出る空気感」や「体に音が当たる感覚」がどうしても欠けてしまいます。
ギターは、音圧を感じながら弾くことで自然にピッキングの強弱やリズムのノリが変わってきますが、Spark CABを導入してからは自宅でも音が空気に揺れる感覚を感じながら練習できるようになりました。
Sparkアンプとの連携が便利

これまで気軽な自宅練習ではSpark 2を使ってきました。
アプリから手軽に音が変えられるし、Bluetoothで音楽を流しながら演奏できる手軽さは一度味わうと手放せません。
特に難しいフレーズなどではテンポを遅くして再生する機能もあるので練習には最適です。
そんなSparkアンプをもう一段階迫力のある音で楽しめるのもSpark CABのいいところだと感じました。
・Sparkアンプに繋げられるようにケーブルが付属
・CABから電源供給できるので、Sparkアンプ側には別途電源を用意する必要なし!(Spark 2は別売りのケーブルが必要)
・スピーカーの口径が2倍なので、同じ音量でも体感的な迫力は一段上に感じられる
Quad CortexとSparkのすみわけ

ただ、Spark 2をはじめとするミニアンプシリーズはあくまでも「練習用アンプ」という位置づけで、音作りには限界がありました。(そうはいっても十分すぎる音質ですが)
そこでバンド用など本格的に音を作り込みたいときはQuad Cortexを使い、その音を家でもスタジオでも同じように再現するためにSpark CABを導入する。
つまり僕にとっては、
- 自宅で気軽に練習 → Spark 2+ Spark CAB
- 本格的な音作りやスタジオでのバンド練習 → Quad Cortex + Spark CAB
という棲み分けになっています。
よかったことは、この二つが全く競合せず、むしろ補い合っていること。
「練習の気軽さ」をSpark 2が、「音の完成度」をQCが担っており、どちらか一方ではなく両方を環境に合わせて使い分けることで「練習」も「演奏」も効率的になったと感じます。
Sparkユーザーで「もっと本格的に音を突き詰めたい」と思った人にとって、Spark CABはちょうどその橋渡しになる存在かもしれません。
スタジオで使ってみた
以前まで、スタジオ練習ではJC-120のリターンにQCを挿して使っていました。
その都度グローバルEQを調整してなんとか許容範囲まで持っていく感じですが、家で作った音とはやっぱり違い、始まる前にあれこれいじっているとそれだけで気持ちが削がれます…
Spark CABを持ち込むと、その手間が一気になくなりました。
家で作った音がそのままスタジオで鳴ってくれるので、準備はケーブルを挿すだけ。
それ以外に余計な調整をしなくていいのは精神的にもかなり楽でした。
バンドのメンバーにも好評で、特にもう1人のギターのメンバーはFRFRの魅力を知り、1週間貸してほしいというほどでした笑
△気になったところ
持ち運びはやっぱり負担

サイズも重さもFRFRスピーカーとしては標準的ですが、それでも毎回スタジオやライブに持っていくとなるとやはり手間ではあります。
寸法 | 492.5 x 399.8 x 255 mm |
重量 | 13.5 kg |
車移動なら全然問題ないですが、電車や徒歩移動の人にはハードルが高いです。
ここはやっぱり安定した音と手軽さのトレードオフなんだと思います。
僕の場合は「家とスタジオで同じ音が鳴る」という安心感と引き換えに、持ち運ぶ負担を選びました。(車があるので正直なところそこまで大きな負担ではないですが…)
もちろんQuad Cortexのようなプロセッサーは荷物を最小限にできるのが魅力で、そう考えるとスピーカーを運ぶのは本末転倒にも見えます。
それでも僕にとっては、どこでも安定した音を鳴らせることの方が、手軽さより価値が大きいと感じ、最終的にこの形となりました。
ヒスノイズはある(大きくはない)
海外のレビューでもよく見受けられる、電源を入れただけで出てくるサー…という音はどうしても残ります。
ただ、マイクを立ててレコーディングをするようなものでもないので、音を出してしまえばまったく気にはなりません。
低音が強め
ヘッドホンで作った音と比較して、少し低音がブーミーな気がします。
ここに関してはだめというより好みの問題のような気も…
床に接地せずにアンプスタンドに載せて使うと振動による低音が減り、より輪郭の出るすっきりとした音にはなります。
まとめ

Spark CABは、QCやその他のアンプシミュレーターを「できるだけそのままの音」で鳴らしたい人にとってとても有力な選択肢だと感じました。
○ アンシミュの音を家でもスタジオでも再現できる
○ ライブで「いつもの音」を背中で感じながら演奏できる
○ ヘッドホンでは得られない演奏感が得られる
○ Sparkシリーズをさらに高音質にできる
もちろん持ち運びの手間はありますが、家で作った音がどこでも鳴るということに何より価値を感じます。
QCなどを使っていて、「場所によって音が変わるのが困る」「ライブ中に背中でも音を感じたい」と思っている人には間違いなくおすすめできるスピーカーです!
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