今回はUniversal Audioから発売されたUAFX Enigmaticについて紹介します。
Enigmaticはダンブルアンプの音を忠実にモデリングしたアンプシミュレーターです。
このペダルはダンブルアンプの中でも伝説的なOverdrive Specialの音を再現することを大きな目的として開発されました。
1970年代から90年代に製作されたSanta CruzモデルやSkylinerモデルなど、それぞれの時代の特徴的な音色を表現するために多くの実機を研究した上で、この小さな筐体でリリース。
多方面で注目が集まっている機材の一つです。
ダンブルアンプが特別視される理由
ここで気になるのが「なぜダンブルアンプがこれほどまでに特別視されるのか」ということ。
その理由としては、
1. ハンドメイドである
・すべてのダンブルアンプはハワード・ダンブル氏による手作り
→一つひとつのアンプにはユニークな特徴が生まれる
2. 高品質の部品
・音質を最優先にした設計思考
・選び抜かれた高品質の部品を使用
3. 伝説的なサウンド
・クリーンからクランチまで幅広いトーンが特徴
・ジョン・メイヤー、スティーヴィー・レイ・ボーン、ラリー・カールトン、ロベン・フォードなど、多くの有名なギタリストが愛用
4. レア度が高い
・限られた数のみ製造された希少性
→「幻のアンプ」とも呼ばれる
これらの要因が組み合わさり、ダンブルアンプは多くのギタリストにとって憧れの存在となっています。
Enigmaticの特徴
ここからはEnigmaticの機能面や、高品質なサウンドを作り上げる要素について整理して紹介します。
ジャズ、ロック、カスタムモード
Enigmaticにはジャズ、ロック、カスタムの3つのモードが用意されています。
ロックモード
パンチの効いたリズムとリード演奏が可能で、オーバードライブを効かせた力強いサウンドを出力します。
ロックやブルースのような表現力豊かなリード演奏や力強いコードワーク向き。
ジャズモード
クリーンで透明感のあるトーンが特徴です。
複雑なコードワークや繊細なリード演奏に最適で、クラシックなジャズギターサウンドを再現。
カスタムモード
ユーザーが自分だけの“D-Style”アンプを構築することができるのがこのモード。
アプリを使ってプリアンプの調整や出力バルブのバイアス設定、アンプのモディフィケーションを組み合わせて、独自のサウンドを作り上げることができます。
UAFX Controlアプリで簡単カスタマイズ
ではアプリ「UAFX Control」を使うことで主にどんな設定ができるのかみていきましょう!
トーンスタックの選択
1970年代のSanta Cruzモデル、80年代のSkylinerモデル、90年代のHRMモデルなど、さまざまな時代のトーンスタックEQを選択することで、アンプの基本的な音色を設定します。
HRMオーバードライブEQ
HRM(Hot Rubber Monkey)オーバードライブEQでは、オーバードライブの音色を細かく調整します。
特定の周波数帯域を強調することで、より個性的なサウンドを作り出すことが可能。
マイクとスピーカーの組み合わせ
3種類のマイクとキャビネットの組み合わせを本体から選択できます。
それだけでなく、先ほど紹介したアプリからさらに6種類のボーナスセット(無料)を追加することもできます。
マイクの種類
Shure SM57
Sennheiser MD421
Royer R-121
Neumann U87
AKG C414
Beyerdynamic M160
Coles 4038
AKG D12
Electro-Voice RE20
キャビネットの種類
★…アプリからダウンロードが必要
1×12 Black GB25
2×12 Boutique D65
2×12 Brute
★4×12 UK V30
★2×12 JBF120
★1×12 Black EV12
★4×12 Stripped GB
★1×12 JBG125
★2×12 D-EV12
フェンダー系のアンプとの性格の違い
アンプといえばフェンダーのアンプが思い浮かびますが、ダンブルアンプとフェンダーアンプの違いはどんなところなのか?
それを表にまとめてみました。
ダンブルアンプ | フェンダーアンプ | |
主なモデル | Overdrive Special, Steel String Singer | Twin Reverb, Bassman, Deluxe Reverb |
トーンコントロール | ミッドレンジが強調される | シンプルでフラット |
クリーン | 温かみがあり、豊かな倍音を含むクリーントーン | クリアで明るいトーン |
オーバードライブ | 粘り気のあるオーバードライブサウンド。ダンブルアンプ特有の滑らかな歪みが特徴 | ナチュラルで控えめなオーバードライブ |
ダイナミクス | ピッキングニュアンスなど微妙なタッチに敏感 | 十分に反応するが、ダンブルと比べてゆるやか |
使用アーティスト | スティーヴィー・レイ・ヴォーン、ジョン・メイヤー、ロベン・フォードなど | エリック・クラプトン、ジミ・ヘンドリックス、ジェフ・ベックなど |
特にダイナミクスに関しては、ダンブルアンプとフェンダーアンプで大きな違いがあります。
ダンブルアンプが「ピッキングする前に音が出る」と言われるほどレスポンスが速いのは、余計な回路を通らず無駄がない設計によるものです。
広いダイナミックレンジを持ち、高域、中域、低域がほぼ同時に出力されるように設計されているため、音の立ち上がりが早く、低音もそれに付いてくるため、音圧や音の壁のようなものを体感できるんですね。
Enigmaticのいいところ
コンパクトで持ち運びやすいデザイン
他のUAFXシリーズと同様に、軽量でありながら頑丈な構造を持ち、ギグバッグやペダルボードに簡単に収まります。
自宅でも、ステージやスタジオでも、場所を選ばずに手軽に使えるのはうれしいですね。
実機に忠実な再現とカスタマイズ性
Universal Audio製品はこれに尽きますね。
ダンブルアンプの伝説的なトーンを忠実に再現し、ギタリストにとって「これだ!」と思える音を実現します。
クリーンからオーバードライブまでの幅広い音色をカバーし、どのジャンルにも対応可能です!
これはアンプの再現だけでなく、マイクやキャビに対してもいえることだと思います。
以前ox(同社のロードボックス)を使っていましたが、マイキングやキャビのモデリングが非常に優れていました。
それぞれの特徴や部屋鳴り感を自然に表現していて時間を忘れて弾いてしまうほど楽しい機材でした。
気になるところ
価格が高め
63,800円と、一般的なエフェクターペダルと比較しても高い価格設定で少し尻込みしてしまいますよね。
・「伝説的なアンプビルダーによるカスタムモディファイの再現」という特別な価値
・プロユースでも即戦力になるサウンド
・自宅でのレコーディングでもライブでも使える
・それらが小さなボディに詰まっている
以上のことと自分の予算を天秤にかけて検討すればよさそうですね。
400mAの電流が必要
これは全然デメリットではなく、単に気をつけるべきことかも。
Enigmaticのようなデジタルのペダルは、アナログペダルに比べて複雑なデジタル回路を使用しています。
これらの回路は信号処理やエフェクトにたくさんの電力が必要になります。
また、複数のエフェクトや機能が一つのユニットにまとめられ、それぞれの機能が個別に電力を消費するため、全体の消費電流が増加するという仕組みです。
→つまりパワーサプライの電力を確認する必要があるということだけです。
おわりに
そう簡単には手に入らない実機を、あのUniversal Audioの技術で完全再現したアンプシミュレーター。
それだけでも惹きつけられる魅力が満載ですよね。
僕はUAのこの「一つに注力する」精神がとても好きです。
いろいろてんこ盛りのマルチエフェクターの「◯◯風」ではなく、完全に実機に近い音を再現してくれる安定感は他のメーカーとは一線を画す大きな優位性だと思うからです。
とは言うもののいつかUAFXシリーズのすべてを詰め込んだマルチが出てこないかなぁと夢見ている自分もいます笑
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