Quad Cortexで有名なNeural DSPが発表した新製品、Nano Cortex。
今回は、そんなNano Cortexの魅力やQuad Cortexとの違いも踏まえつつ、その実力を徹底解剖します。
Nano Cortexの魅力ポイント
Nano Cortexは、アンプモデリング、キャビシミュレーション、エフェクト、IRローディング、そしてNeural DSP自慢のキャプチャー機能までをも網羅した、まさに「全部入り」な小型マルチプロセッサーです。
・超コンパクト&軽量設計
ポケットにもラクラク収まるサイズ感!重さも気にならないから、どこへでも連れて行けます。
・USB-CでもDCケーブルでも駆動
給電方法が2種類あるため、家ではDCケーブル、外ではモバイルバッテリーなど、状況に応じて柔軟に対応できます。
・スマホアプリで直感操作
Bluetoothで接続すれば、スマホでNano Cortexを操作できます。
・「約5分」で自分だけのサウンドをキャプチャー
お気に入りのアンプやペダルのサウンドをそっくりそのままコピーできる「Neural Capture」機能も健在です!
実機と聴き分けできないほどのクオリティーには感動…
Nanoだから精度が落ちるということはなく、Quad Cortexと同等の品質です。
・世界中のユーザーとサウンドをシェア
「Cortex Cloud」を使えば、膨大な数のプリセットにアクセスしたり、自分で作ったプリセットを公開したりできます。
アプリからNano Cortexに転送することができます。
・Transpose機能
極めて自然なトランスポーズがついており、半音下げなどの曲にもスムーズに対応できます。
ArchetypeなどのプラグインやQuad Cortexでも搭載されている低レイテンシーの便利機能。
価格は99,800円
日本での代理店はキョーリツコーポレーションですが、まだ価格の発表は公式にはされていません。(9/22現在)
ただ、海外のサイトでは549ドルという情報があります。
現在のレート(1ドル約143円)で単純計算すると78,379円。
【追記 9/25】
価格が発表されました。99,800円!
以下のことを考えれば高すぎるというわけでもないと思います。
・日本語のマニュアルを用意してくれている
・日本語でサポートを受けられる(修理の場合は本国に送る必要はありますが…)
・輸入コスト(送料や関税)などを肩代わりしてくれている
何度か楽器の個人輸入をしたことがありますがトラブルもよく聞きますし、何より届くまでの心労がすごい…
日本での販売価格に関して多少の割高感は否めませんが、「安心代」として捉えることもできますね。
フラッグシップモデル「Quad Cortex」との違い
Neural DSPのフラッグシップモデルである「Quad Cortex」と比べると、Nano Cortexは機能面で少しシンプルな設計になっています。
Nano Cortex | Quad Cortex | |
---|---|---|
サイズと重量 | 14.4 x 10.3 x 6.2 cm 620g | 29 × 19 × 4.9cm 1.95kg |
ディスプレイ | ✕ | 7インチのタッチディスプレイ |
エフェクトの自由度 | ブロックが固定されている | 自由自在にカスタマイズ可能 |
アンプモデル数 | 25のNeural Captures | 50以上 |
エフェクトモデル数 | 5 | 70以上 |
IR数と保存可能数 | 300 256個までのカスタムIRを保存可 | 1000以上 256個までのカスタムIRを保存可 |
プリセット保存数 | 64 | 1024 |
アンプやペダルのキャプチャー機能 | ◯ | ◯ |
プラグイン互換(PCOM) | ✕ | ◯ |
Wi-Fi接続 | ✕ | ◯ |
Bluetooth(アプリとの接続用) | ◯ | ◯ |
USBオーディオインターフェイス機能 | ◯ | ◯ |
サイズはこんなに違います
(2製品のサイズを基に、比率をあわせて作成)
Nano Cortexの内蔵アンプ・キャビネット・エフェクト一覧
ギターアンプ(Neural Captures)
名称 | 基となったモデル |
Comet 60 5 | Komet® 60 |
Bogna X100B Ch1 1 | Bogner® Ecstasy 100B® Ch1 |
Watt Custom Clean 7 | Hermansson Hiwatt® Custom PA100® Clean |
Comet 60 6 | Komet® 60 |
NoMatch Chief 1 | Matchless® Chieftain® |
US Prince 65 4 | Fender® Princeton® 65 |
Watt Custom VH 1 | Hermansson Hiwatt® Custom PA100® VH |
D-Cell H4 Ch2 1 | Diezel® VH4® Ch2 |
Bogna Fish+290 5 | Bogner® Fish® + Mesa® Boogie® Stereo Simul-Class™ 2: Ninety™ |
Brit 2555 Rhy 12 | Marshall® Silver Jubilee® 2555 Rhythm |
Custom 3SE+290 2 | Custom Audio Amplifier® 3+SE® + Mesa® Boogie® Stereo Simul-Class™2: Ninety™ |
D-Cell H4 Ch3 3 | Diezel® VH4® Ch3 |
ENG Energy 3 | ENGL® Powerball® Mark I |
Bogna X100B Ch3 Lead 18 | Bogner® Ecstasy 100B® Preamp Ch3 Lead |
CA Studio+290 2 | Mesa® Boogie® Studio Preamp® + Mesa® Boogie® Stereo Simul-Class™2:Ninety™ |
CA John’s Ch3 7 | Mesa Boogie® JP2C® Ch3 |
PV 505Sig 7 | Peavey® 5150® Signature |
Brit 2555 Lead 1 | Marshall® Silver Jubilee® 2555 Lead |
ベースアンプ(Neural Captures)
名称 | 基となったモデル |
Aggi 751 31 | Aguilar® DB751® |
Amped SV Classic 3 | Ampeg® SVT Classic® |
Rodent+SV 3 | ProCo® Rat® + Ampeg® SVT Classic® |
CA MixBass 3 Amp2 | Mesa® Boogie® M6 Carbine® + Big Block 750® |
Anima Fuzz 8 | Human Gear® Animato® |
ギターキャビネット
名称 | 基となったモデル |
110 US PRN C10R | Fender® Princeton® with Jensen® C10R drivers |
112 UK C15 Blue | Vox® AC15® with Celestion® Alnico Blue drivers |
212 Match D30 Sig A | Matchless Amplifiers® DC30® Sig A |
212 US TWN C12Q 00s | Fender® Twin Reverb® with Jensen® C12K-2 drivers |
412 Brit TV GB75Hz ’69 | Marshall® 1960TV® with Celestion® G12M25 drivers |
412 CA Stand OS A V30 ’01 | Mesa® Standard OS Angled with Celestion® Vintage 30 drivers |
412 CA Trad S UKV30 90s | Mesa® Traditional Straight with Celestion® Vintage 30 drivers |
412 Zila Cust V30 ’12 V2 | Zilla® Custom with Celestion® Vintage 30 drivers |
ベースキャビネット
名称 | 基となったモデル |
115 Amped Modern | Ampeg® SVT® 115HE® |
810 Amped VT Aln 70s | Ampeg® SVT® 810® with custom Eminence® ceramic drivers |
エフェクト
カテゴリ | 名称 | 基となったモデル |
Utility | Pre FX | Adaptive Gate | |
Pitch | Pre FX | Transpose | |
Modulation | Post FX | Chief DC2W | BOSS® DC-2W® Dimension |
Delay | Post FX | Analog Delay | |
Reverb | Post FX | Mind Hall Reverb |
Nano Cortexの残念なところ
ディスプレイがない
設定の確認や細かい操作はスマホアプリを使う必要があります。
エフェクトは5種類のみで順番は固定
自分好みにエフェクトの順番を並べ替えたり、ルーティングを組んだりすることはできません。
プラグイン互換(PCOM)は対応せず
ArchetypeシリーズなどPC/MacのプラグインはQuad Cortexで順次対応していますが、Nanoではそもそも仕様上その機能は搭載できません。
ただ、Cortex Cloudにはプラグインをキャプチャーしたものがアップロードされているので、それを使うことは可能です!
残念ではないけれど気になるところ
電源ボタンがない
電源ケーブルを挿したら自動的に起動、抜いたらOFFになるという仕様。
いちいち電源ケーブルを抜く必要があるのは少し面倒かも?
チューナーの表示がざっくりしている
Quad Cortexでは音程をセント単位で数字であらわしてくれます。(「+2」や「-1」など)
ズレがなく音が合ったら「0」となり数字でわかりますが、Nano Cortexはつまみがピッチの高低に応じて光るだけなので、微妙なズレは調整しにくいかもしれません。
Quad Cortexとのプリセット互換はない
前述の通りシグナルチェーンが固定されていることが要因です。
Cortex CloudでNano用のプリセットがダウンロードできますが、柔軟に音作りが楽しめるQuad Cortexとの差はありそう…?
デスクトップアプリはない(今のところ?)
Quad CortexはMacやPCと接続して、アプリからさらに簡単に操作することができます。
もちろん内蔵ディスプレイでもできますが、PCのモニターで操作をするほうが断然やりやすい。
しかしNanoはそのアプリには対応しておらず、スマホでの操作一択という状態です。
Nano Cortexはこんな人におすすめ
- 手持ちのペダルと合わせることを前提にしている
- 手軽に持ち運べる高音質なアンプシミュレーターが欲しい
- 複雑な操作よりも、シンプルでわかりやすいほうがいい
- プラグインを使うつもりはない
- ディスプレイがなくてもアプリで直感的に操作できたらいい
- Neural Captureで自分だけのサウンドを作りたい
まとめ
Nano Cortexは、Quad Cortexと比較すると機能はシンプルながらも、Neural Captureを含む基本的な機能は網羅していてモバイル性も兼ね備えています。
ディスプレイがないことやエフェクトの制限などは気になりますが、Quad Cortexとの差別化という意味では合理的な判断でしょう。
Cortex Cloudで世界中のプリセットやキャプチャーサウンドをダウンロードできるので、内蔵数が少なくてもあとから好みの音を探せると思えばそこまでのデメリットでもありません。
僕はQuad Cortexを使っていますが、もし今からどちらかを選ぶとしたら…?
「迷う理由が値段だけ」なのならQuad Cortexを選ぶと思います。
上達したり知識が増えたりしたときに、たとえば
「細かくルーティングの設定をしたいのに…」
とか
「Archetype: Plini Xで作った音をライブでも使いたいのに…」
など、Quad Cortexだからこそできることに目がいくと思うからです。
Xの投稿では、Quad Cortexのミニ版だと思うとがっかりするかもしれないがNeural Captureが使える小型ペダルだと思うと優秀、という声もあり鋭い分析だなぁと思いました。
価格以外のNanoにしかない魅力に惹かれた人や、目的がはっきりしている人はきっと楽しめるのではないでしょうか!
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