【実録レビュー】Gibson Murphy Labのレスポール(Ultra Heavy Aged Murphy Painted)をアメリカから個人輸入してみた

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今回は、憧れのGibson Custom Shop Murphy Labの1959 Les Paul Standard Ultra Heavy Aged Murphy Paintedを、アメリカの楽器店から個人輸入した体験をお届けします。

前にもFender Custom Shopのストラトを個人輸入したことがあり、今回が2回目の挑戦。
個人輸入と聞くと少しハードルが高そうですが、流れがわかれば国内で買うよりもお得になることもあります!
そんな体験を、注意事項やちょっとしたコツも交えながらご紹介します。

↓レスポール好きなら一家に一冊あると言われる名著

もともとレスポールは苦手だった

僕はテレキャスやストラトのようなシングルコイルの音が好きで、レスポールには正直いいイメージがありませんでした。

具体的には…

  • 弦のテンションがのっぺりしていてハリがない
  • 野太い音で、抜けが悪く感じる
  • 重い!!

そんなネガティブな印象を持っていた僕に転機が訪れたのは、YouTubeで偶然目にしたPRS McCarty 594の動画。

まず見た目に惹かれ、次に音に感動し、試奏することなくSEモデルを購入してみたら驚きの連続でした。
パーツ構成や設計思想がレスポールに近く、それでも演奏性は軽快。
音もシングルコイルでは得られないパワーとサステインがあり、「もしかしてレスポールって悪くないかも?」と心が揺れ始めた瞬間でした。

楽器店で試奏 〜Murphy Labとの出会い〜

レスポールに対する意識が少し変わってきた頃、実際に弾いてみようと楽器店を訪れました。

レギュラーライン

まずは一番手頃なレギュラーラインのレスポールから試奏。
弾き慣れたテレキャスやストラトとは違う、ずっしりとした構えとローの効いた音に一瞬戸惑いつつも、「レスポールも案外いいなぁ…」と自分なりに納得しました。

カスタムショップ

次にカスタムショップのモデル(VOS)へ。

ネックの握り心地、出音の密度、どれをとっても別物でした。
音に芯があり、弾いた指先からじわじわと響きが返ってくるような感触が好印象。
これまでのレスポールへの見方が一気に覆されるような感覚でした。

また、はじめに弾いたレギュラーラインと比べて音の粘りや立ち上がりのキレといった面で一段上に感じ、その時点でレギュラーラインは自然と候補から外れていきました。
(とはいえ決してレギュラーラインが悪いわけではなく、価格面でのバランスや「比べなければこれでも十分」という感触もありました)

Murphy Lab -Ultra Light Aged-

そして次に試奏したのが、カスタムショップ内のエイジド加工部門であるMurphy Lab。
4段階のエイジングレベルがある中で一番軽めのUltra Light Agedを弾かせてもらいました。

エイジングレベルウェザーチェック(塗装割れ)打痕・傷塗装の剥がれ金属パーツ(くすみ・酸化)全体の印象
Ultra Light Agedごく薄く控えめほとんど無しほぼ無し軽い酸化・くすみ新品に近いがほんのりビンテージ風
Light Aged中程度小さな打痕や軽い擦り傷あり一部に自然な剥がれ(主にボディエッジなど)軽い酸化・くすみ大切に弾き込まれた自然なビンテージ感
Heavy Agedはっきりとした目立つチェック中〜大きめの打痕が複数あり広範囲に剥がれ(主にボディ。ネック裏は基本無し)サビ風の重い加工長年使い込まれたようなリアルなビンテージルック
Ultra Heavy Aged非常に細かく密に、全体に渡って入る深い傷や大きな打痕多数激しい剥がれ(ボディ・ネック裏にもあり木地露出も)サビ風の重い加工完全なオールド感。当時の物とそっくりな徹底エイジング

見た目の美しさだけでなく、音の立ち上がり、レスポンス、そして何よりネックのグリップ感。
演奏していて自然と笑みがこぼれてしまうくらいでした!

この時点で僕の中ではもうMurphy Lab一択に。

演奏性・音質・見た目…どれをとっても自分が求めていたものに限りなく近くて、「さらに深掘っていったらどうなるのかな?」と、わくわくしてきました。

Ultra Heavy Agedを弾いてしまった…

Murphy Lab -Ultra Heavy Aged-

お店にはUltra Light Agedの他にUltra Heavy Agedの個体も置いてありました。
見た目は“本物のビンテージ”!

ネック裏まで塗装が剥がれ、金属パーツにはくすみや酸化処理がされていて、ひと目で「ただ者じゃない感」を放っています…!

店員さんに「弾いてもいいけど引き返せなくなりますよ」と笑いながら言われたんですが、どういうことかわからず試奏をお願いしました。

Ultra Light Aged と全然違う!!

実際に弾かせてもらったところ、その音の深さに圧倒されました…

最初の一音から空気感がちがう!
中域が豊かでありながらも輪郭がはっきりしていて、まるでアンプのEQを何段階も調整したような完成されたトーンが自然に出てきます。
それでいて、ネック裏の塗装がはがれているので手触りが異常なほど自然で、手が吸い付くような弾き心地

思わず店員さんと顔を見合わせながら笑ってしまいました…!

Ultra Heavy Agedの音が良い理由

この時に店員さんがふと語ってくれたのが、

「あくまで持論なんですが、ネック裏の塗装が剥がされていることで、ギター全体が均一に振動しやすくなっているのかもしれません。そう考えると、この音の違いにも説明がつく気がするんですよね」

という話でした。

僕自身、確かに“鳴り”が違うことははっきりと感じていたので、その説には思わず納得してしまいました。
Ultra Heavy Agedにしかないネックの塗装剥がれは単なる加工ではなく、音にも直結しているということを実際に弾いてみて感じた気がします。

何より、出せても80〜90万円と予算設定していた自分が、150万円を超えるUltra Heavy Agedを第一候補に挙げている時点で、店員さんの意見に強く共感したことの表れです笑

日本は在庫が少ない→でもReverbで発見!

とはいえ、デジマートで探してみてもUltra Heavy Agedの在庫はLemon系のカラーがほとんど。
僕が好きなのは、Iced TeaやRoyal Teaのような、少しトーンを落とした渋い色味です。

店員さんに伝えてみたものの、Ultra Heavy AgedのTea系のカラーは基本的に流通量が少ないとのこと。

そんな中、Reverbで検索をかけてみると、好みの条件にぴったりの一本が見つかりました!

それが今回購入することになったMurphy Lab 1959 Les Paul Standard Ultra Heavy Aged Royal Tea
しかもTom Murphy本人が塗装した“Murphy Painted”の個体。
日本ではあまり見かけない一本でした。

Reverbでは出品手数料を見込んで価格が高めに設定されているはずなので、直接お店のウェブサイトを確認してみたところ、なんと1,000ドル(約14〜15万円)も安くなっていました。
そこで、お店にメールを送って購入の意思を伝えました。

支払い〜配送〜到着まで

ここからは、実際の購入手続きとギターが手元に届くまでの流れについて紹介します。
個人輸入に挑戦したい方の参考になればと思い、少し具体的に書いてみます。

支払いは楽天銀行の海外送金で

今回選んだ支払い方法は、楽天銀行の海外送金です。
前回はPayPalを使いましたが、以下の理由から楽天銀行を選択。

  • PayPalは手軽だが手数料が高い(送金手数料+為替手数料で合計約8%
    150万円の送金だと、手数料だけで10万円近くになるので✕
  • Wise(という送金サービス)は手数料が格安だが、楽器店側が未対応だった(+ちょっと面倒)

送金額が大きくなるほど手数料の差が響いてくるので、少しでもコストを抑えられる方法を選ぶのがポイントです。

海外送金の流れ

①楽天銀行に海外送金サービスを申し込む

楽天銀行を使った海外送金には、口座を持っているだけではだめで、事前の登録と審査が必要

マイナンバーカードを使って本人確認を行い、海外送金の機能を使えるようにします。

②受取人(相手先)の登録

以下の情報が必要:

  • 銀行支店名と住所
  • 銀行口座番号と口座名義
  • SWIFTコード
  • 銀行コード

💡「SWIFTコード」とは?
世界中の銀行に割り当てられた「識別番号」のこと。
海外送金を行う際に、「どの銀行のどの支店に送金するか」を指定するために必要になります。

日本の銀行に「支店コード」があるように、海外の銀行には「SWIFTコード」があると考えると分かりやすいでしょう。

(ちなみに「銀行コード」は日本にあるものと同じで、銀行自体を識別する番号です)

③送金区分の選択

「貿易取引 → 商品購入・輸入代金」を選択します。

④楽器店と金額のすり合わせ(必要に応じて)

多くの日本人は日本円しか持っていないと思われます。
そのため、海外送金の際には日本円で送金し、銀行側が米ドルに換算して送金してくれる仕組みになっています。

為替レートは常に変動しているため、今回は楽器店と送金のタイミングを合わせ、送金時点のレートで必要な金額を確認することにしました。

今回、楽器店側が当日のレートを調べた上で金額を教えてくれ、その金額をそのまま送金しましたが、実は海外送金のレートは実際よりも数円高く設定されているみたいです。

つまり、当日のレートよりも多めに払わないといけないということ。

でもそんなことを知らずに送金したため、340ドルほど少なく送金してしまいました。
幸い楽器店側は特に問題にせず発送手続きに進んでくれましたが、追金を請求されてもおかしくない差額でした…笑

もしかすると、日本円を考慮しなくても、はじめから必要な金額(ドル)を指定すればそれに応じた日本円が自動で計算される仕組みがあるのかもしれません。
このあたりについてはあまり詳しくないので、ご存じの方がいらっしゃったら教えていただけると嬉しいです。

⑤送金実行

情報を入力し、送金を実行。150万円近い金額なので、入力ミスがないか何度も確認しました。

FAXでの書類提出

送金が完了すると、楽天銀行から「送金目的を証明する書類をFAXで送ってほしい」というメールが届きます。

今どきFAX?と思われるかもしれませんが、FAX以外では絶対に受け付けてもらえません。

  • 必要な書類:
    • 請求書(インボイス)
    • オーダーID(楽天銀行で送金した時に発行される番号)
  • 送信方法:
    「FAX it」というアプリを使えば1日1回無料でFAXを送信できます。
    WordやPagesなどでインボイスを作成し、PDFに変換してアプリから送信するだけ!

注意
アプリでFAXを送る際、楽天銀行宛のFAX番号は市外局番の「0」を除いて入力します。
そうしないとエラーになって送れません!

配送の流れ

ギターの発送はUPS(United Parcel Service)で行われました。

UPSはアメリカ国内はもちろん国際便でも実績がある業者で、過去にストラトを個人輸入した際にも利用していたため(一部悪評はあるものの)個人的には安心して任せられます。

配送ルートは、

Louisville(ケンタッキー州):UPSの大規模なハブ拠点
→Anchorage(アラスカ州):日本行き貨物の経由地
→日本国内:成田または関空に到着後、国内の配送拠点へ

という流れで進んでいきます。

Flightraderのアプリでわくわくする

UPSから追跡番号が発行されるので、それを使って発送の状況を随時確認できますが、さらに今回はFlightradar24という飛行機追跡アプリを活用して、実際にギターが搭載されているであろう貨物機が「今どこを飛んでいるのか」をリアルタイムで確認してみました。

自分のギターが大空を越えて日本に近づいてくる様子をアプリ上で見ていると想像以上にわくわくします!
「今は北方領土の近くを飛んでる!」とか「東京にいるからもうすぐ!」と、目をきらきらさせながら画面を眺めていました笑

僕のギターが初めて日本の土地を踏んだ瞬間!

通関と税関

無事空港に到着すると、ここからは通関手続きが行われます。

通関(Customs Clearance)
UPSが日本に「この荷物を通していいですか?」と申請する手続きのこと。

税関(Customs)
審査して「日本に通してもいいですよ」とOKを出す日本の公的機関のこと


つまり、通関は“手続き”税関は“審査する機関”をさします。

問題がなければ国内の配送センターに移され、トラックに積まれます!

配送会社の指定も可能

UPSがそのまま届けてくれることもあるそうですが、別会社に委託されることも多いです。
もし配送会社をこちらで指定する場合は、UPSに連絡して配送会社を指定します。

ただ、日本到着前日の午前中までに追跡番号を用意して依頼が必要なので、追跡番号をもらい次第すぐにUPSに連絡するほうが無難です!

到着までにかかった日数

時差の影響もありますが、日本時間で考えると発送から受け取りまで4日間でした。

梱包もしっかりしており、もちろんギターにもまったく問題なしです!

総額は約160万円

日米貿易協定があるので、ギターに関しては関税が免除されています。

でも、送料を含む総額の60%に対して10%の消費税がかかります。

これは、家に配達してくれたドライバーさんに直接渡せばOK。

ということで総額は、

ギター1,516,820円 (送料含む)
送金手数料1,750円
消費税92,000円
合計1,610,570円

国内で販売されているUltra Heavy Agedの新品相場はおおよそ155万円前後ですが、現状ではレモン系のカラーがほとんどです。

そんな中で、自分の理想としていたカラー、しかもMurphy Paintedの個体を手に入れることができたという意味では金額以上の満足感があります。

トム・マーフィーさんは1950年生まれとご高齢なので、ご本人が元気なうちに手に入れられたことも大きな意味があると感じています。

「もっと円高の時代だったら…」と思わなくもありませんが、「レスポールがほしい!」と思ったのが今である以上、今がこのギターを迎える絶好のタイミングだったんだと思います。

おわりに

これまでの過程を思い返すと、自分の中の認識や好みが少しずつ変化していたことを実感します。

最初は、あの重さや演奏性のクセから敬遠していたレスポール。
「一生持つことはないだろうな」と思っていたら、一生ものの買い物をしてました笑

エイジド加工にも正直魅力を感じていませんでしたが、実際に試奏してみて、特にネックの手触りが思った以上に自然で弾きやすいことに驚かされました。

そして何より、生音の鳴り方やアンプを通したときの出音の気持ちよさは、レギュラーラインどころか、Ultra Light Agedですら感じられなかったレベル。

当初は「さすがに155万はなぁ…」と思っていた価格も、弾いてしまったばかりにこの感触を手放したくないと思うようになり、妥協はせずに買うことを決意しました。

実際に見たり試奏したりできない個人輸入には、当然ながら不安もつきまといます。
特に高額なギターとなると、現物を見られないことはかなりの障壁になります。

そんな中、購入を後押ししてくれたのが、ある1本の動画でした。

この動画に映っていたのは、自分が探し求めていたRoyal Teaで、Ultra Heavy Aged、そしてMurphy Paintedの個体と、今回購入したギターとまったく同じもの。
それだけでも十分に心惹かれる動画ですが、さらに驚いたのは、そのシリアルナンバーが自分の購入した個体とほんの数番違いだったこと。

きっとこれは「兄弟機」だと思うと、試奏ができないなどの不安はなくなってどんどん楽しみに変わっていきました。

ギターの個人輸入はこれで2回目になりますが、円安の状況下であっても、国内にはない色や仕様を探すことができたり、Murphy Paintedのようなめずらしい仕様を手に入れられたりと、価格だけでは語れない価値があります。

リスクを理解したうえで、信頼できるショップとやり取りできれば、個人輸入は選択肢として十分に現実的です!

この記事が、同じような思いをもっている方の背中を少しでも押すきっかけになればうれしいです。

初めて個人輸入したときの記事はこちら↓

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